年賀状にまつわる悩み

要点

1)生まれる前の赤ちゃんを亡くした場合に喪中はがきを出すか出さないかは、社会通念上明確な約束事がなく、両親の判断に任されている。

2)年賀欠礼する場合、事前に喪中はがきを出すか、年明けに寒中見舞いを出すか、という選択肢がある。

3)流産・死産した際に年賀状をどうするかは、夫婦間や親族間で意見が違う場合もあるため、事前に話し合い、意思確認をして決めた方が良い。


流産・死産で子どもを亡くした場合、年賀状をどうするのか、喪中はがきを出すべきなのかについては多くの人が悩んでいます。当事者としては、「大切な子どもを亡くして喪に服しているのだから、年賀欠礼しよう」というのが自然な心情だと思います。が、一方で、 世間一般としては、お腹の中の子はまだこの世に生まれていない存在であり、その死をあえて周囲に公にすることについては賛否両論あるようです。ネット上の色々な意見を読んでわかったことは、生まれる前の赤ちゃんを亡くした場合に喪中はがきを出すか出さないかは、社会通念上明確な約束事がなく、両親の判断に任されているということです。

年賀状を書く気持ちにはとてもなれないのであれば、年賀状は出さずに寒中見舞いを出すか、事前に喪中はがきを出すという選択肢があります。年末近くになくされた場合は、とてもそれどころじゃない、何も考えられないということもあると思います。その場合は、自分の気持ちや体調を優先して、年賀状については考えられるようになったら、その時に考え対応することで十分だと思います。

いずれにせよ、年賀状をどうするかについては、夫婦間での意見のすり合わせも必要なので、早めに意思確認をしておくと良いと思います。

喪中はがきを出すときの考え方

①年賀状だけでも今後のお付き合いを継続したい方(仕事関係を含め)には、喪中はがきを出す。誰が亡くなったかの詳細は書かずに、不幸があったため年賀欠礼する旨だけを伝える文面にする。

*年賀状だけの関係で、妊娠していたことを知らない人には、不幸があったことだけを伝えるのが無難かと思います。

*なんとなく年賀状だけのお付き合いをしている方には、喪中ハガキも出さずに、この機会にフェイドアウトするのもアリかと思います。

②赤ちゃんの死をきちんと伝えたい&気持ちをわかってくれそうな人には、赤ちゃんの週数に関係なく、喪中はがきで事情を伝えてよいと思います。

*周囲が妊娠に気付かない週数の場合、色々と聞かれて説明するほうがつらいので、通常どおり年賀状を書いたという意見がネット上では多かったです。

◆喪中はがきを出す場合の注意点

①喪中はがきを書いた場合、赤ちゃんのことについて色々と聞かれる可能性もある(誰が亡くなったかを書かない場合、誰が?と聞かれたり)ので、その覚悟&準備(どう返答するか考えておく)をしておく。

②喪中はがきの内容について、夫婦できちんと話し合い、意見を一致させること。親戚間の付き合いが多い場合、夫婦の両親の意向も確認した方が良いこともある。

*夫に話さずに出して、後から親戚等からのいちゃもんがあり、もめたという話を読んだことがあります。

◆喪中はがきを出すことのメリット

①年賀状には、様々な慶事(結婚、妊娠、出産)の報告や子どもと一緒の家族写真が載っていることが多く、死別後間もない時期にこれらの話題に触れることは、強い悲しみ、痛みが刺激されるつらい体験になるかもしれません。喪中はがきを事前に出しておくと、これらの年賀状を受け取らずに済むというメリットがあります。

②そこまで親しくないけれども、今後も付き合う予定の人(親戚など)で、今回の妊娠について知っている人に対して、赤ちゃんを亡くした事実を対面で直接伝えるのは、なかなかしんどい作業だと思います。このような場合、喪中はがきを通して、赤ちゃんとの死別の事実と今後どのように接してほしいと考えているのかを伝えておくと、今後の付き合いが楽になるかもしれません。今後どのように接してほしいのかは人それぞれ違いますが、元々苦手な相手やあなたの気持ちを普段からあまり尊重してくれない人に対しては、この出来事を理解してもらおうという期待はせずに、「赤ちゃんのことを話すことはとてもつらいので、当面は赤ちゃんのことには触れず、今まで通り接してほしい」「妊娠や出産に関する話題は控えてほしい」「しばらくは夫婦だけでゆっくり過ごそうと思う」等を伝えられると良いかもしれません。

喪中はがきとは? 

定義:1年以内に近親者(一般的には2親等まで)に不幸があったとき、喪に服しているため、年賀の挨拶を遠慮することを知らせる挨拶状

送る期間:11月中旬〜12月上旬までに届くように送る。年末に不幸があり、喪中はがきが間に合わない場合は、年が明け、松の内が明けてから(1月7日〜2月3日まで)寒中見舞いはがきとして年賀欠礼を伝える。

書く内容: 

1.喪中のために年賀欠礼することを伝える。近況報告やその他の用件は書かないこと。

2.「年賀」「おめでとう」「お慶び」などの言葉は使わず、句読点を入れずに、お世話になったお礼等を伝える。

3.いつ、誰が亡くなったのか、差出人からの続柄を伝えるのが一般的だったが、最近では、亡くなった方の詳細を入れない場合も増えている。

最後に

近親者の不幸のために不要となったお年玉付き年賀はがき(新品)は、 販売期間内であれば郵便局窓口で無料で通常切手に交換してもらえます(服喪であることを申し出て、書類提出する必要あり)。

大切な人をなくしてしばらくの間、なくなった人の命日や誕生日、その人といつも過ごしていた記念日や年末年始の時期になると、喪失の悲しみが強くぶり返し、とても苦しく感じることがあります。

赤ちゃんをなくした家族の場合は、命日や誕生日の他、子どもにまつわる祝日・行事(お雛様、5月の節句、母の日、父の日、クリスマスやお正月など)のある時期は、テレビも含め街中が「幸せな親子、家族」のイメージ・宣伝で溢れるため、「ここにあの子がいない」という痛切な悲しみ、寂しさ、孤独感、痛みが呼び起こされやすい時期だと思います。これらの痛みは「anniversary reaction (日本語では、記念日反応や命日反応)」と呼ばれています。

あなただけではなく、多くの人たちが、記念日反応と呼ばれる心の反応を経験しています。たくさんの当事者の経験から、記念日反応とどう折り合っていけば良いのか、対処法についてまとめられた記事もあります。この苦しい時期をどうやり過ごせば良いのか、いろいろな工夫の仕方があるので、記事を参考に、心の準備をしてみてください。

周産期グリーフケア情報ステーション@北海道

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